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月に一度、さまざまな一次産業に関係する人たちとカウンター越しに語り合うLiV×LiVEs(リヴ×ライブ)。毎月変わる一夜店長。普段なかなか知り合う機会のない彼らが、どんなことを思い、どんな仕事をしているのか、生の声を酒の肴に交流を楽しむイベントです。

 

5月の一夜店長は「宗像日本酒プロジェクト」に関わる3人

5月は酒米を作る米農家の2人と、その酒米で日本酒を造る酒蔵の3人が登場。

有機農業を通じて環境保全を進める「宗像日本酒プロジェクト」について、それぞれお話を聞きました。

 

まずは本日のおつまみ

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福島さんの奥さん作、酒粕ビスケット

香ばしい黒ごまの香りとサクッとした食感、そして後からただよってくる優しい酒粕の気配が絶妙な身体に優しいお菓子。

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塩麹の豚肉炒め。麹を使うとなんでこんなにお肉柔らかくなるんだろう。

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山田錦(酒米)で作った甘酒

もともと酒米として使われる山田錦を麹にして作った甘酒。直売所で売ってみると指名が入るほど大好評に!パウチ加工して販売されてたら絶対買う!ってくらい美味しかったです。

そしてメインのお酒は「山の壽」

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日本酒プロジェクト

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「“自然栽培での稲作は難しくない”このことを一般の人や周りの農家の人に知ってもらいたい。そして、自然栽培の稲作が広がることで田んぼを通る水がきれいになり、川がきれいになり、さらには海がきれいになる環境回復を目的とした活動です。」
発起人、農業福島園 代表福島のその想いから本プロジェクトは始まりました。

これは宗像日本酒プロジェクトのコンセプトの最初の文です。

※全文はこちらから読むことができます!

環境回復を目的としたお米農家さんの活動、というのはわかるのですが、そこに日本酒?どういうことなんでしょうか。少しずつ読み解いていきましょう。

 

農業福島園の福島光志さん

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祖父母が米農家だった福島さんは熊本の農学部に進学。農業全体を見ると農薬を使った栽培がほとんどの割合を占める中、福島さんは自然栽培を教える先生に出会います。

「その先生の周りは無農薬で農作物を育てるのが当たり前の世界だったので、僕自身は農薬を使わないことが怖くもなんともなかったです。でも普通の農家さんは農薬を使うのが当たり前にやってきたことなので、無農薬に転換することがすごく怖いみたいで。だからじいさんとはずいぶん喧嘩しましたね。(笑)」

大学を卒業後、最初の稲作は祖父の教えのもとだったので仕方なく農薬を使うものの、2年目から自然栽培にチャレンジできるようになります。また稲作だけでなくトマトやブルーベリーなど同時に複数の作物にチャレンジしていたこともあり、実際に稲作で生活が成り立つようになるまでには5、6年かかったそうです。

「無肥料は無肥料なりに育ちます。肥料を入れるから農薬が必要になるというのが自然栽培の鉄則のようなものなんです」と福島さん。どういうことなんでしょう?

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紙に描きながら説明する福島さん

<肥料をあげる場合>

稲の成長が促進されるので、株と株の間が密集する
→密度の高いところにウンカという害虫がつき、株の養分を吸ってしまう
→養分がなくなるので実が充実せず、枯れてしまう。これが一種の害虫被害。
それを阻止するために農薬を散布する
→結果的に、米はたくさん穫れるが肥料と農薬がセットで必要になる

<自然栽培の場合>

発育を促進するための肥料を使わないので株と株の間に適度に隙間が生まれ、害虫が好む環境が生まれにくい
→害虫被害が少ないので農薬を使う必要がない
→結果的に収穫できる米の量は肥料を使った場合の6割ほどと少ないが、肥料も農薬も使わないのでその分のコストと手間が省ける

さて、あなたならどちらの方法で栽培しますか?

消費者側からすると「無農薬の方がいい」というのが一般的だと思いますが、農薬ありきでお米を育ててきた農家さんからするとそれは大きなリスクを背負う可能性があるためなかなか方向転換の舵がきれません。農業に従事し始めたときから無農薬が当たり前だった福島さんはスタートから違う道を進んでいたのですね。

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福島さんの商品

農業福島園では直接販売できる流通経路も独自に開拓しています。そのお米に惚れ込んで年間契約する顧客も多く、また同時にお米に付随した様々な商品開発も行っています。

そして約3年前。そんな自然栽培のお米に惚れ込んだある一人の女性が、ひっそりと日本酒プロジェクトの発端を生み出しました。

 

「このお米をお酒にしてくれる酒蔵はありませんか?」

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山の壽を飲みながらトークを楽しむ参加者

その女性は普段から面白いことや魅力的な活動があれば県内外問わずでかけていく方で、福島さんが一般募集している田植えのイベントなどにも参加していました。そしてお酒も大好き!福島園のお米に惚れ込み、知り合いのいる福岡市の酒販店、とどろき酒店に相談をします。

そこでとどろき酒店が紹介してくれた酒蔵が久留米で200年の歴史を紡ぐ「山の壽酒造株式会社」でした。

 

山の壽酒造株式会社

山の壽酒造は久留米市の北野町にある200年の歴史をもつ酒蔵です。その歴史や柔軟な発想を活かした取り組みをパネルとともに斉田さんに説明していただきました。

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斉田さんの話し

山の壽酒造は創業して今年で201年目。江戸後期から始まり、本家の建物は日本の家百景に載るほどの趣を残しているそう!蔵の方は平成3年の台風で全壊してしまったためその後2年の休蔵を余儀なくされるも、今では現代的な設備が整った新しい蔵に生まれ変わっています。

会社のスローガンは「Good time with 山の壽」。「我々は日本酒を売ってますが、単純にお酒を売っているつもりはないです。私達のお酒を飲むことで生まれるいい時間を提供しています」と話す斉田さん。

蔵では年齢も経験年数も関係なく、みんなで知恵を出し合いながら作業を行っているためか、新しいお酒も生まれやすいそうです。

余談ですが先日福岡で行われたG20のレセプションにはなんと、山の壽のお酒が振る舞われています!雄町(おまち)という酒米で、昨年福岡で最高賞の福岡県知事賞をとった純米酒。金賞をとるような酒蔵がプロジェクトに関わっているなんて、なんと心強いのでしょう!

一見すると酒蔵に閉じこもっているようには見えない、どこか垢抜けた雰囲気の斉田さん。実は酒造に関わってからまだ4年ほどなのだそう。それまでは何をしていたんでしょう?

「もともとはカメラマンをしてました。写真を撮りながらいろんなところを旅してたんですが、30代になってからは違うことがしたくなって、北アルプスの山小屋で4シーズンくらい番頭をしたりもしてました」。

かなり自由人なんですね。そして山小屋が閉まって季節労働先を探しているときにたまたま酒蔵の求人を見つけます。「一緒に山小屋にいた仲間に、福井で酒造りをしている人がいたので、酒蔵もいいなと思って」。笑いながら斉田さんは続けます。

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みんな身を乗り出して話に食いつきます

「働いてみたらその所作を見た職員に初日から『斉田さん、なんかもう10年いるみたい』と言われるくらい馴染んでしまって。その後、社内のいろいろに巻き込まれる形でそのまま酒蔵の人になってしまいました。」

プロジェクトが開始して今年で3年目。2017、2018年とも収穫分では1樽(一升瓶にして1000本)分の山の壽が作られましたが、2年とも完売しています。

「作る酒の量が増えることは有機農業の田んぼが増えることにつながります。いずれは10樽分作れるようになって、もっと有機農地が増えていけばいいですね。」

 

米農家 石松さん

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石松さんは福島さんと一緒に宗像日本酒プロジェクト推進会として活動する米農家さん。地域の農地のやりとりの判断や仲介をする宗像市農業委員会に所属しており、福島さんの先輩です。

本来70代くらいで役が回ってくる農業委員を40代の石松さんと30代の福島さんが務めているというのは前例になかったそう。

「農業委員になったことで耕作放棄地や一人あたりの農地面積が増えている現状を日々目にします。宗像日本酒プロジェクトでは収益の一部が地域の環境保全のために使われる仕組みをつくっていく予定です。ここに関わることで同時に環境保全も進めていけたらと思っています。まぁ、お酒が好きなので、それに乗っかりたかったというのが関わることになったきっかけなんですけど。(笑)」そう話しながらも、石松さんはこのプロジェクトの広げ方を模索しているといいます。

さいごに

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これからどのような活動を考えているのでしょうか?

「どうしていかないといけないか、ということを考えています。そもそもネーミングがお酒の名前なのでお酒ありきになっていますけど、将来的にはいろんな酒蔵でいろんな日本酒プロジェクトのお酒ができていいと思ってます。お酒だけでなく寿司専用の米も作れたらいいなと思っていて、酒とお寿司が一緒に提供できる!とかも面白そうだなと。楽しくやっていかないと続かないと思うので、どんなふうにおもしろくしていったら有機農地の面積が増えるかなと思っているところですね。こんなふうにしたらおもしろいんじゃないかな、というアイデアがあれば教えてください。」

楽しく継続していくことが大切!ということで、いろんな人のアイデアを借りながら、助けてもらいながら、農業の在り方が変わるタイミングを待ちつつ、今後もプロジェクトは続いていきます。

自然栽培で作られ、環境保全につながる活動の中で生まれた「山の壽」。酒販店で見かけた際はぜひ手にとってみてください!

 

取材・文・写真:執行沙恵

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